殺しの調べ

　私は探偵である。
　本名は探田偵介48歳、指サックのメーカーにはこだわりがある。気さくに探偵と呼んでほしい。

　今回探偵はあえて社員達に何も告げず、ある時刻をきっかけに突然来訪した。ガサ入れという奴だ。狙うテーマは、

　必ずしもヘッドホンをしていた社員だけとは限らず数はいつもより少ないが、不意を襲うことでより正確な情報が得られることだろう。

　男のiPodに映し出された文字は、『Ants』(F-BLOOD) だった。貴様、なぜこんな曲を聴いている!?

「フミヤのファンだから」

　意外と普通だ。それなら藤井兄弟のユニットの新作（2008/1）にも手を出すだろう。

　探偵は問答無用でCDケースを奪い取る。何を聴いているかと思えば……『「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」スーパー・アレンジ・バージョン』だと!?

「ちょうどいまこのゲームを遊んでるんですよ」

　なるほど、普通な理由だ。それにしても遊んでいる最中のゲームで、エンディング曲まで網羅しているCDを聴いても大丈夫なんだろうか。

　iPodの画面に表示されているのは金のジャケット、そして『FLIGHT RECORDER I -LittleWing 1989~1992-』(LINDBERG) の文字だった。

「ほんの出来心で……、でもリンドバーグは……リンドバーグは、私の青春だったんです！」

　狼狽するその声は、ファンの人に怒られそうなほどだった。いや、初期のリンドバーグを聴いてても別に恥ずかしいことではないと探偵は思うヨ？