私は探偵である。
本名は探田偵介49歳、近ごろBARにいることで有名な探偵とは何の関係もなく、そもそも探偵ですらない。気さくに探偵と呼んでほしい。
スマイルブーム社は比較的自由な社風であり、基本的には私物の持ち込みも許されている。しかしこれが曲者とは思えないだろうか。便利な私物と見せかけて、ひそかに盗聴器などを持ち込む……スパイの常套手段である(多分)。あるいは凶器をカモフラージュすることも考えられるだろう。ほら、凍らせて使ったりとか。
探偵は犯罪を未然に防ぐため、オフィスの調査を開始した。
机の上に乗ってる、その妙なものは何?
証拠物件A
ユニ×ーンガ×ダムのSDモデル、それはわかる。しかしマウスパッドの右上にまでワーキングスペースを浸食する必要があるのか、それは探偵には分からなかった。
「純白のMagicMouseとマッチする色合いだし……」
そこはどうでもいい気がする。
証拠物件B
机の上にコレを見たときは素直に何なのかよく分からなかったと、ここに告白しておこう。
持ち主の証言によれば、これをアレしてこう組み立てるとスマートフォンスタンドになるという便利グッズだった。もともとはPC雑誌の付録であったらしい。
目の前で組み立ててもらったのが証拠画像奥にある1体だが、では探偵に聞かれるまでは特に組み立てもせず平べったいままずっと置いていたのだろうか。事件の闇は深い。
証拠物件C
ドライバー、むろんコンピュータにしょっちゅうアップデートを促されない方の、物理的なドライバーである。
しかも各種揃えたフルセット。いったい何のために!?
「PCを分解したり組み立てたり、意外と使うんですよ」
でもこれ、会社の備品じゃなく私物では?
「まあ……それくらい使うんですよ」
この会社には何かがあるのか。
証拠物件D
比較的珍しくきれいに片付いた机の上に、唯一似つかわしくないそれはあった。
ふりかけ!
驚くべきところではないかもしれないが、会社の机に常備しているというのも、しかしどうだろうか。
毎日の弁当にふりかけるにしても、最初から弁当にかけておけばいいのでは?
「それだと昼までに湿っちゃうじゃないですか。こうパリッとしたところが……」
これもまたひとつのこだわりだろうか。
証拠物件E
いろいろありすぎてどこから突っ込めばいいのかよくわからない。
ひとことでこの写真をまとめるなら「生活用品」、あるいは「事件現場」といったところではないか。
「コンビニの箸に付いてくるつまようじって、ついとっておくけど使いませんねー」(捨てながら)
使い古しでなくて良かったが、新品に見えるような清潔な置き方をすればいいのに。
証拠物件F
初めて問題のない机を見つけたかと思えば、モニタの裏側になぜか破れた宅配便の送り状が貼り付けられているのである。
「え、何それ」モニタの所属を示す大事なものかと思われたが、今まで使用者本人もその存在を知らなかった。 そもそも送り状を詳細に鑑定した結果、この送り状とモニタの間には何の関係もないことが明らかになっている。本当に何だこれ。意味ありげで捨てるに捨てられないぞ。
証拠物件G
この写真を見ていただこう。角度上 一見わかりにくいかもしれないが、これが某『シ×ン』のグッズであり、一応ペン立てとしての役目を果たしているのは明白である。
しかし、その奥にいるあれは、なんだ。
「こうネジを巻くと、ほら……腕を振って動いた!」
そういうことじゃない。
証拠物件H
重要書類の隣にごく自然に置いてあったのだが、それもどうか。
「かなり真剣に検討しています」探偵としては止めるべきなのか、応援すべきなのか。
証拠物件I
問題の机だが、あまりに複雑に色々な物が積み重なっており、しかもうかつに撮影もできない社外秘が混じっているため、探偵といえど手出しができない無法地帯となっていた。
「大丈夫大丈夫、散らかってきたら、ちゃんとこっちに整理して置くようになってるから」
右から左に移して積み上げているだけで何も解決していない。かなりの難事件となるだろう……探偵は最下層に詰まっているであろう書類の行方を思い、戦慄を隠せなかった。
- スタッフの半分以上は片付けが苦手
- 無駄に見えたものにも何らかのこだわりが秘められているが、客観的にはおおむねどうでもいい
- 本当に事件が起きたら鑑識班は苦労するだろう