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ブリスター・ジョンの『あの頃8ビット・マシンと』

8ビット・マシンが世界のすべてだったあの時代。若者驚愕、中年感涙! 天下御免のオールドゲーマー、ブリスター・ジョン(日本人)による回想録。

(番外編)ログインの時代・中編

 パソコン雑誌『ログイン』休刊の日、5月24日まであと数日。
 このコーナーでは追悼特集としてログインの特集記事を追ってみようとしたらこれが思っていた以上に濃密で、どうやらとても1回の記事におさまらないどころか3回になりそうな気配なんですが、という話を僕はWeb担当のUさんに切り出したのだった。
「うーん……本編をまだ3回しかやってないのに、番外編が3回続くっていうのもどうかと思うんですけど」
 なんだか『未来放浪ガルディーン』みたいだよね。と、言っても年代的にUさんに通じない。いや聞いてよ、これでも月刊時代にしぼったんだよ。本当なら月刊から月2回刊に移行してしばらくは追いたいぐらいだったのに。
「まあ実際1冊1冊が面白いんですよねえ。長くなるのも分からないではないですけど」
 Uさんは僕が持参した数冊の当時のログインを読みふけっているのだった。僕の作戦が図に当たったようだ。くくくどうだ面白いだろう。どうかね、この特集を2回で終わらせるなど国家的損失というものじゃないかUさん。国家はともかくとしてUさんも首を縦にふり、このログイン特集特集は前・中・後編の3回に分けてお送りすることになったのだった。

■ 1986年

1月号「3大特集+付録で気力充実新年号だ!!」
 3大特集は正月号の恒例行事なのね。「特集1・お年玉ソフトウェア大プレゼントだ!」はおなじみとして、特集2は「コンストラクションだぜっ!」。ゲームエディタというよりは既存ゲームのマップエディタが主流なのはこの前と変わらず。
 「特集3・高橋青年のFM音源活用教室」は充実期にさしかかってきたFM音源でどれだけいい音を出せるかという、かなりテクニカルな記事。僕の記憶が正しければこの高橋青年、ログインのライターでもあったけど後に『ザナドゥ』のBGMを担当する高橋俊弥氏だったと思う。そう思うと贅沢な記事だなあ。スクウェア内製のミュージック・エディタのプログラムまで公開されてるし。
2月号「パソコンアニメーションがたのしいぞっ」
 この時代のマシンパワーでアニメって無理だろ! と思ってしまうが、そこはさすがにドット絵のキャラクターアニメだったり、一色の線画によるパラパラアニメだったり。そんな中、Apple IIGS用の『Fantavision』(同名のPS用ゲームとは無関係)だけがトゥイーン機能でとんでもなく傑出していてビックリする。これ本当に20年前のソフト?
3月号「シミュレーション&パソコン通信大特集号」
 なぜか唐突に特集2本立て。「RPGがバースなら、シミュレーションは落合だっ!!」というコピーも時代を感じさせるけど、当時はまだ『現代大戦略』『三國志』『信長の野望・全国版』の3大シミュレーションが出たてでメジャータイトルになりきれてなかったからこういう位置づけなのかな。
 出たてといえば「パソコン通信」もまだ始まったばかりの時代。たしか1985年の電気通信事業法改正ですそ野がぐっと広がったんじゃなかったっけ。そうは言ってもインターネットブームの到来まではまだ10年あるんだけど。
4月号「とにかく1番ぶ厚いログインなのだ!!」
 本当に1番ぶ厚いんだからまいっちゃう。いつもの倍くらいあるんだこれが。特集企画「RPG超特集」の力の入りっぷりもすごいけど、実はこのページ数の多さ、エイプリルフール(4月号)の冗談でやってみたというあたりがメチャクチャだ。普通ないでしょ、エイプリルフールだからページ数を倍にしてみましたなんて雑誌。当然4月バカのウソ記事もごっそりあるんだけど、『オホーツクに消ゆ』映画化とか『べーしっ君』アニメ化とか信じちゃった読者も多かったんだろうなあ。
5月号「パソコンゲームは天才なのだ!!」
 なんのことかと思えば、つまりは「思考ルーチン」特集。とんでもなくテクニカルなテーマだけど、人工知能ソフト(厳密には人工無脳)に対談させてみたり、芹沢九段に将棋ゲームを指してもらったり(当然ソフトの負けですよ)、はては表紙に赤塚不二夫に「天才バカボンのパパ」を描いてもらったり、好きほうだいだ。難しい話も徹底的にかみ砕いて説明してくれるからログインはやめられない。
6月号「ひさびさのアドベンチャー大特集だもん」
 新しいものに目をつけ続けるログインだけに、通り一遍なアドベンチャーゲーム紹介はしない。いきなりログインオリジナルの『リトルコンピュータピープル殺人事件』に始まり、アクションアドベンチャーゲームのはしりと言って過言でないかもしれない(言い過ぎかもしれない)『ミッドナイトチェイス パート2』、画期的なシステムを搭載した『DEJA VU』(後にファミコンに移植されたけど……いや、言うまい)、マインドスケープ社やインフォコム社の新感覚ノベルアドベンチャー(『ランボー』やS.キングの『霧』がゲームになってたなんて知ってた?)等々、いやこの号本当に面白いなあ。どうしてアドベンチャーゲームがこの後下火になっちゃったんだろう。
7月号「アニメーション&ミュージックに注目だ」
 前回のアニメ特集から5ヶ月。さすがに目立った技術的ブレイクスルーは起きてないみたいで、そのまま前回の続きという感じの内容。それでもこれだけプッシュするということは、これからはアニメとサウンドが来るぞっていう予想があったのかな。それは間違ってないけど、今にして思えばさすがに早すぎたかも。
8月号「あの人気のRPG超特集の続編なのだ」
 わかりづらいタイトルだけど、4月号の続編っていうことね。『ザナドゥ』『メルヘン・ヴェールII』『夢幻の心臓II』に海の向こうでは『ウィザードリィIV』『ウルティマV』が開発中と、もはやパソコンゲームといえばRPG一色という感じになってしまった。無名の時代から追いかけ続けてたログインはやっぱり凄いなあ。
9月号「続編のパート2のRPG超特集だっせ!!」
 本当にわかりづらいタイトルだけど、4月号の続編の8月号のそのまた続編ってことね。もうなんだよその説明。
 この号ではあのRPGごっこ『ジャンケンズ&ドラゴンズ』の新シナリオが大特集。RPG全盛になっても決して攻めの姿勢を崩さないログインが好きだ。
10月号「有名ソフトメーカー18社が参加したぞっ!!」
 そう、おなじみプログラムオリンピックももう3年目だ。えーと、これ全部書く? アスキー、キャリーラボ、クリスタルソフト、ゲームアーツ、コスモス・コンピューター、ザインソフト、システムソフト、シンキングラビット、ソニー、T&Eソフト、日本コンピュータシステム、日本ファルコム、ハミングバードソフト、ビクター音産、ボーステック、ホット・ビィ、マイクロキャビンに最後はログインソフト。ソフトハウスにとびきり元気があった時代だね。
11月号「コンストラクション・遊ぶ側から作る側へ!!」
 ちょっとゲーム攻略系の記事が多くなってきて、なんだか普通な雑誌になっちゃうかなーと思ってたところで、いきなりコンストラクションに力を入れ始めた。ログイン初のオリジナルツール『RPGコンストラクションツール』が登場だ。名前がそのまんまだ。
 ウルティマ型(ドラクエ型と言ってもいいけど、ログイン的にはやっぱりウルティマ型)のRPGを自作できるツールソフトで、PC-8801用。今のRPGツクールの原型と言っちゃうには機能的に差がありすぎる気もするけど、歴史の流れ的に面白そうだから断言しちゃおう。RPGツクールの源流は1986年10月に生まれた!
12月号「いよいよシミュレーションが面白くなるっ!!」
 日本のSLGの流れを一気に決めてしまった『三國志』『現代大戦略』の2大SLGを満を持しての大特集だ。やっぱり3月号の時点では早すぎたのか。中期以降の攻略・速報性を重視するログインとは隔世の感があるゆったり感だ。



■ 1987年

1月号「アドベンチャー開発ツール大公開!!」
 この時期のログインの華はコンストラクションだ! 今回登場するのは『アドベンチャーツクール』! ついに「ツクール」の名前が出てきたぞ。ちなみにツクールの語源はツール+(ゲームの作り方を学ぶ)スクールという洒落なんだそうだ。作者が『オホーツクに消ゆ』プログラマーのゲヱセン上野氏だけあって、オホーツクのエンジンを流用してグラフィック要素を排した感じのテキストアドベンチャーツール。これまたPC-8801用。当時シェア大きかったものなあ。
 傑作『殺人倶楽部 (Murder Club)』をはじめに『アステカII 太陽の神殿』や『リバイバー』『メイドゥム』といった意欲作、原作ものの金字塔『めぞん一刻』も紹介。アドベンチャーゲームというのは妙に浮き沈みの激しいジャンルなんだけど、この時期は何度目かの黄金期だった気がするぞ。
2月号「いろんなアニメーションをコンストラクション」
 アニメーション特集、多いなあ! この特集常連のログイン製『カリグラフツール ぱたぱた君』シリーズはお手軽なパラパラアニメソフト。マウスがほとんど何の役にも立たない外付け周辺機器だった時代に「手軽だから!」という理由でマウスオペレーションになっている矛盾がたまらない。
 海外ではAmigaが『DELUXE VIDEO』やシネマウェア『Defender of the Crown』で大感動を起こしている時代、ハード格差というか日本のマシンはこういうのに向いてなくて何歩も遅れてたんだよね。それでもMSX2でレイトレーシングしたりX1で立体メガネに同期させたり、涙ぐましい努力をしているぞ。
3月号「うれし、たのしのコンストラクション」
 コンストラクション攻勢はまだまだ続く。今度は横スクロールアクションエディタ『ソード・オブ・レジェンド』だ。でも本当はこの特集、「スクロールアクション大特集」でコンストラクションはオマケだったんだけどね。
 この号ではついに伝説を築いた16ビットパソコンの名機X68000が発表。翌月には32ビットの怪物Macintosh II。そろそろ8ビットマシンの肩身がせまくなるカウントダウンが始まっている。ログイン月2回刊まではあと16ヶ月……。
4月号「えっ!! おいしいRPGの作り方ですって!!」
 今度は『ウィザードリィ』タイプのダンジョンRPGコンストラクションツールだ。その名も『ダンジョン万次郎』。ぼ、僕は好きだぞ、このセンス。
5月号「おもしろシミュレーション大研究だ」
 『大戦略II』『信長の野望・全国版』の鉄板続編2作だけで特集が組めそうなもんだけど、『ディーヴァ』『アート・オブ・ウォー』『エルスリード』に『オーガ』と変わり種の紹介も忘れない。オリジナルゲーム『パソコン雑誌創刊シミュレーション2』まで載せちゃうぞ。
6月号「かっとびの超豪華2大特集号なのだ!!」
 これ背表紙だけ見てもなんだかわからないけど、最高にふるってる特集だ。
 まず特集1は「ラジコン+パソコンは新ゲームの薫り」。ラジコン戦車にカメラと無線映像送信機、光線銃とセンサーを取り付けて超ハイテク化。戦車の車載カメラから送られる映像をパソコン画面に映して大臨場感で相手の戦車と3Dアクションを楽しもうって企画だ。これ多分1から10までログイン編集部の独創じゃないのか。
 後になって編集者自身がこのマシン1台作った時点で力尽きて、対戦プレーのくだりがねつ造だったことをカミングアウトするんだけど、当時でここまでいけたんなら今なら本気でできるんじゃないこの夢のゲーム? 遊びたい。ものすごく遊びたいぞ。
 特集2は「MIDIに関する6W1H」。うわあMIDIが最新技術として紹介されてるよ(もちろんホームユースに足るようになってきたという意味で、技術自体はもっと前からあったんだけど)。ここで登場するのが戸田誠二氏や立花ハジメ氏というそうそうたるメンツ。もうお腹いっぱいです。

 と、お腹いっぱいになったところで字数もそろそろ限界。怒濤の後編へ続きます。

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