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ブリスター・ジョンの『あの頃8ビット・マシンと』

8ビット・マシンが世界のすべてだったあの時代。若者驚愕、中年感涙! 天下御免のオールドゲーマー、ブリスター・ジョン(日本人)による回想録。

(番外編)ログインの時代・前編

(はじめに)
 ご存知の方も多いと思いますが、パソコン雑誌『ログイン』が今月24日発売号を最後に休刊することが決定しています。
 え!? ウソ! ログインに限ってそれはないでしょ、そんなログインが雑誌媒体じゃなくなる日がまさかくるなんて、と2段落目にして取り乱してしまうのも黄金期のログインに夢中だった者のサガ。
 思えばログインの創刊は1982年。多くの人に「黄金時代」として認識されている月刊時代〜月2回刊時代中期は、8ビット・マシンから16ビット・マシンへと移り変わっていく激動の時代でもありました。
 まあそんな分析は他のきちんとしたサイトにまかせておくとして、このコラムではこのコラムらしく『ログイン』の毎号の特集記事を追いながら当時をただひたすらに懐かしんでみようと思います。
 また規定の文字数をオーバーしそうな気もしますが、なあにその時はまた2回に分けさせてもらおう。結果的に掲載がログイン休刊を過ぎちゃったら面白いですよね(ああ、また担当のUさんに怒られる)。

■ 1984年

 僕が初めて『ログイン』という本を認識したのがこの年。本当はログインは1982年創刊なんだけど、この連載らしく僕の知識の範囲内ですべて済ますのだ。  もちろん今回の資料だってすべて僕の蔵書だ。そんなわけで、中途半端にもほどがある1984年10月号から。
10月号「プログラムオリンピック」
 後の名物企画プログラムオリンピック最初の号だ。これはソフトメーカー各社にインタビューしつつ、ショートプログラムのゲームも提供してもらうという、まああんまりオリンピック感はない企画だけどちょうどロスオリンピックの年だったからね。
 そのあたりはさておき、いまいち読者層にピンときてなかったプログラマーやソフトハウスという存在を身近に見せてくれるという意味では、すごく読み手の欲求に応えてくれるいい企画だったと思う。今となってはクリエイターにインタビューなんてあって当然だけど、当時は珍しい方で、ログインはその点インタビュー系の記事が充実しているのも魅力だったなあ。
 ちなみにこのプログラムオリンピックに参加したメーカーはクリスタルソフト、システムソフト、シンキングラビット、ストラットフォード・コンピューターセンター、T&Eソフト、ハミングバードソフト、マイクロキャビン、アスキー。もはや現役メーカーの方が少ないか。
11月号「ロールプレイングゲームしてみようよ」
 いまのパソコン雑誌で「RPGしてみようよ」と書くのと当時「RPGしてみようよ」では意味合いがぜんぜん違うよね。だって当時はRPGというのがどういうゲームジャンルなのかがまずわかってなかったんだから。『ボコスカウォーズ』が立派なRPGとして認知されてた時代なんだぜ。
 そんなわけでこの特集では「これぞRPG!」っていうわけでログインオリジナルのゲーム『LABYRINTH』を掲載。いや、日本市場にそもそもRPGがないんだからこれは正しい。どうせアメリカの2大RPG『ウィザードリィ』や『ウルティマ』のことをいくら書いたって遊べやしないんだから、簡易ウィザードリィこと『LABYRINTH』を、簡易ウルティマこと『LABYRINTH II』を、プログラムリストごと掲載した方がいいに決まってるんだ。たぶんそうだ。
12月号「ギャンブルゲームで夜もすがら」
 この特集なんてもっとすごいぞ。ピンボール『LEX ARBIT』、スロット『EXCITING SLOT』、スマートボール『SUPER SMART BALL』、競馬『THE DERBY』とタマ数はそろっているけど、全部ログイン編集部オリジナルソフトだ。一応市販ギャンブルゲームの話もあるけど4ページの対談で短くおさめてしまってる。
 この当時、たいして話になるようなギャンブルゲームがなかったんだろうなあ。そこで無料の(まあ、プログラムリストを入力する手間はもちろんかかるけど)ソフトをばんばん載せちゃうっていうあたりの過剰さがすごい。今のシーンはたしかにつまらないけど、ここは面白くできる土壌だって!という叫びが聞こえるようだ。

■ 1985年

 こうして見たらまだ20年以上前ですよ。この時代のログインを見ると、とにかく自分たちの手で新しい遊びを発掘しようという、雑誌として異様なくらいの熱気に驚かされる。基本的に新しいゲームが出てからそれを(言葉は悪いけれど)「後追い」する形が良くも悪くも普通の雑誌の姿だ。この時代のログインにはかけらもそういう気配がない。
1月号「3大特集で増ページ、オモシロ新年号だ!!」
 なんだか知らんけど豪気ですなあ。3大特集の内容といえば「特集1・お年玉プレゼント大会」 これは正月号だからまあよくある内容かな、とも思うけど次からがすごい。
 「特集2・怪獣、怪獣、また怪獣」なんだよそれ! この時期は1984年12月に映画『ゴジラ』が約10年ぶりのお目見えということでファンの中ではちょっとしたフィーバーになっていた。そこに乗っかって怪獣対防衛軍もののシミュレーションゲームや、もちろん映画ゴジラの中でのCGの使われ方とか、……いま見るとこの企画、かなり編集者の趣味でやってる気がするなあ。
 「特集3・オーディオ・ビジュアル・ゲーム」はちょっと驚きの内容。AVにこだわってゲームを遊ぼう!という企画なんだけど、ホームプロジェクターのない時代にゲーム画面をプロジェクターで映したり、スピーカーを通すという発想じたいがなかった当時になんとBOSEのエフェクターを通して音に深みを出したり、現代のホームシアターを先取ることはなはだしい内容。
 こういう現実的に言えばムリだけど(当時としては価格帯も高いしね)、手を出そうと思えばたしかに不可能じゃない、「ちょっと未来」を実際にやってみせてくれるフットワークの軽さもログインの魅力だった。
2月号「おもしろパソコンゲームをつくろう!!」
 なんとも抽象的なタイトルだけど、具体的にはシナリオの書き方特集。そもそもドラマ性というものがほとんどないのが当時のゲームシーン。現代なら起承転結とか文章技巧の話になるんだろうけど、この特集ではむしろ「目のつけどころ」に焦点をあてている。
 いやこの当時、ゲームの舞台ってファンタジーかメカか現代コメディばっかりで他にないの? っていう感じだったの本当(あれ、当時はって書いたけど、もしかして今もそうか?)。そこで谷山浩子調メルヘンはどうだ、『東海道五十三次』はゲームにならないか、歴史改変ハードSFってあったらすごくない? とか提案してヒントにしてもらおうって寸法。
 うーん、これ今読むとまるで業界誌の特集だなあ。ゲームを遊ぶ読者層よりも作り手目線の企画だよ、これって。ログインというとおふざけという印象も強いけど、まじめに業界のあり方を憂えていたのかもしれない。この特集を読んでクリエイターになった人がいたら、面白いんだけど。
3月号「みるみるロールプレイングが面白くなる!!」
 RPGは鉄板企画だね。日本産RPGは全然少ない時代だけど、アメリカの状況を見れば面白いのはたしかなんだからとにかくみんな遊べ! そんで流行れ! っていうノリだったのかな。今でいうとFPSみたいな位置づけだろうか。
 そこでこの号ではRPGの舞台になること多数なファンタジー世界の紹介が中心。世界各国の民話に登場するモンスターの習性とか、ファンタジー映画にみるRPGっぽさとか。包括的な「モンスターガイド」なんて英語のD&D関連書をあさるしかない時代だから、ゲーム的ファンタジーの世界観の入り口として秀逸な企画だと思う。
 一方でおなじみログインオリジナルゲームは、RPG『NINJA』。ファンタジーから一歩外れて、抜け忍が主役のRPGというヒネリをちゃんと効かせてるところが嬉しい。
4月号「みんなで遊べるゲームが断然ごきげん!!」
 多人数プレイが面白いのは現代なら当然の事実。ええ、もちろんこの時期にそんな認識はありませんので、まずジョイスティックを何本も接続するための「改造」から始まります。
 いや本当に回路図が載ってて、「ハンダごてを用意しよう!」から始まるのよこの特集。海外の傑作『M.U.L.E.』に触発された企画だったのかなあ。この時期のログインの先見の明はとにかく凄い。
5月号「なんと、最新アドベンチャーゲームが発覚!?」
 出た! ログインオリジナルゲーム『死人は便意を催さない』って知ってる? これ遊んでみたかったんだよなあ。ログイン編集部を舞台にしたハチャメチャ推理アドベンチャーで、宇宙人は出る(らしい)わ地下ダンジョンで魔王がトイレの紙がなくて困ってる(らしい)わ……。対応機種は当時高嶺の花のPC-9801。シンキングラビット社のスクリプトエンジンをそのまま借りて作ったからPC-9801しかないのはしかたないんだけど、ああ本当遊んでみたかったなあ。こういう風にエンジンをソフトハウスが雑誌に無償提供してくれるあたりも時代ですかね。
 この特集、これまでと違って市販の新作ゲームもいっぱい紹介している。この後アメリカを席巻するシステムを搭載した『KING'S QUEST』もこの号が初登場かな? 日本のノベルゲームの元祖と言って過言ではない(あるかもしれない)海外の「エレクトロニック・ノベル」もの、日本からは『オホーツクに消ゆ』と、市場が盛り上がってたから追いかけるのも当然といえば当然。
 それでも基本、日本のゲーマーが手を出せない海外産ゲームの紹介が大半というあたりはログインですね。読者としてはこの喉から手が出る感じが楽しかったものよ。
6月号「そしてSFゲームをと、誰もが言った……」
 SFゲームとはこれまた広いくくりだ。小説界では永遠普遍のテーマ、SFとはなんぞやから始まるあたり、ちょっとログインらしからぬオタクな特集ですね。
 目玉は横山宏さんのイラストがもう死ぬほどかっこいい『ロボットバトルV』。ログインオリジナルゲームで、ロボットのパーツをカスタマイズしながらコロシアムで敵のロボと1対1で潰しあうという……どっかで聞いた気もするゲームだろうけど、もしかするとこの系統のゲームの元祖って言っていいんじゃないかなあ。
7月号「けっきょく究極コンストラクション」
 『PCS』と言って『ピンボール・コンストラクション・セット』の略だと覚えてる人少ないだろうなあ。そのPCSをはじめとする、ゲーム開発ツールソフトの特集。当時は『ロードランナー』や『ザ・キャッスル』みたく1つのゲームのステージを自作するというタイプが多かったけど、いまは汎用的にいろんなシステムを作れる「ツクール」系に収束した印象がありますね。そういえば「ツクール」ももとはといえばログイン発のソフトだったっけ。
8月号「週末に、めきめき高得点する本」
 お、ログインに珍しい攻略記事だ。ファミコンブームのあおりを受けたのかな。基本的にアクションゲームに不向きなパソコンでもがんばればここまでできるっていう見本みたいになってます。ラインアップは『テグザー』『サンダーストーム』『ザ・キャッスル』『ギャラガ』『イー・アル・カンフー』『キングフラッピー』『大脱走』etc.……。あ、全部パソコン版ね。『ハッピーフレット』とか『スペアチェンジ』とか、こう言っちゃなんだけどマイナーだなあ。
9月号「これでRPGの意外な面白さが分かった!」
 国産RPGがいよいよ盛り上がってきたのがこの時期。新たなデファクトスタンダードを定義した『ハイドライド』もあれば、徹底的に正統派をめざした『ファンタジアン』もあり、傑作の続編『ファイヤークリスタル』に斬新な世界観で魅せる『ザ・スクリーマー』、シミュレーションRPGの元祖(?)『ジェネシス』……キラ星のような新作の紹介ももちろんあるが、そんな中ログインが提唱したのはライブRPG『JANKENS & DRAGONS』だった!
 通称『ジャンドラ』と呼ばれるコレ、いかにわかりやすくRPGを説明するかというログインのテーマの究極形で、まあ簡単にいえばプレイヤーもモンスターも会話イベントもみんな人間でやってみるという、一種のRPGごっこ。戦闘はジャンケンで、負ければHPが減るというわかりやすいシステム。これ今見てもイベントとしてはもの凄く面白そうだなあ……。記事の作り方が上手いというのももちろんですが。
 ページの下端に「サイコロ本」(いわゆるゲームブック)形式のゲームが載ってるのもいいね。これをRPGと言えるかといえば疑問だけど、ジャンルの枠にとらわれないログインの姿勢は今考えるに正しい。
10月号「帰ってきた“特集プログラムオリンピック”」
 あれから1年、本当に帰ってきました! 参加ソフトハウスはクリスタルソフト、ハミングバード、ゲームアーツ、ビクター音産、シンキングラビット、マイクロキャビン、システムソフト、T&Eソフト、テクノソフト、日本ファルコム、スクウェア、マジカルズゥ、ログインソフト。最後がちょっと手前味噌。
 この号では『ウィザードリィ』日本語版がいよいよ発売ということでそっちの特報も。これって今にして思うに日本のゲーム史上かなり巨大な転換点だったよね。
11月号「お気楽プレイでアドベンチャー」
 当時アドベンチャーゲームは、面白さはともかくけっこうめんどくさいゲームとして認識されていた!(そのへんは前回の記事をごらんください) そこでこの特集タイトルなんだろうね。
 実際この特集で扱っているゲームもビジュアルとストーリー重視で比較的お気楽な傑作『ウイングマン』『WILL』、コマンド入力式から離れた『軽井沢誘拐案内』『KING'S QUEST II』『WHERE IN THE WORLD IS CARMEN SANDIEGO?(カルメン・サンディエゴを追え!)』というラインアップ。あ、『白夜に消えた目撃者』のルポも載ってる。うーん、本当にゲーム自体が白夜に消えちゃったなあ。
12月号「ドラゴンすりゃ売れてま、無限のRPG特集」
 『ドラゴンスレイヤー』と『ウルティマIV』と『夢幻の心臓II』をむりやりひっかけたダジャレタイトルだけど、まあ時効だろうか。怪物ソフト『ウルティマIV』や『ハイドライドII』の発売を前に、今回もついてきたログインオリジナルのRPG『東海道五十三次』や『ダンジョン・オブ・ブリタニア』はちょっとかすんで見えちゃう。ログインが牽引しないでもRPGというジャンルがはっきり認知されたってことなんだろうけど、こうして順に見ていくとなんだか寂しくもある。

 と、それなりに駆け足で追ってきたつもりだけどもまだ1年ちょっと。次回に続くにしてもこの調子だと前・中・後編になってしまう目算だけど、24日に間に合うのかしらん?

コメント

私も1985年くらいからログインの魅力にハマリ、毎月発売日(8日だったかな?)を楽しみにしていました。

X1から始まり、X68000と微妙に世の中の主流から離れた路線のマシンを使い続けていましたが、逆にそれが楽しかったり…。

(ちなみに、今でもX68000は現役で、ネットに繋いだりメールを見たりしていますよ。)

各号のタイトルを見ているだけでも、当時のワクワクが思い起こされて、凄く楽しい気分になれました!

90年代前半までしか読んでいませんでしたが、確かに月二回刊になってからはパワーダウンを感じましたね。

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