もうエンターブレインさん(株)には足を向けて寝られません。
このサイト内コラム「あの頃8ビット・マシンと」で雑誌『ログイン』休刊を記念した特集を掲載していたのは記憶に新しいが、その休刊号の発売日からライターのブリスター・ジョン氏の様子が徐々におかしくなっていったのである。
「もしもし××さん、ジョンですけど。さっぽろ駅で今月のログイン売ってませんでした?」
「あれ? 札幌なら雑誌の発売日遅れるから今日はまだ売ってないんじゃないですか?」
「まあそうなんだけど、案外ってこともあるかと思って。いや用事はそれだけなんですけどね。じゃあプツ(通話切断)」
「もしもし××さん、いまどこ? ヨドバシカメラ? じゃあ私の分もログイン買ってきてくださいよ!」
「え? 買ってないんですか?」
「昨日発売日でしたよね? どこにも無いんですよ!」
「単に悪天候とかで遅れてるだけじゃないかなあ……本のコーナー見ても置いてないですよ」
「じゃあいいです。あ、やっぱり隣の紀伊國屋も見てきてもらえませんか。私は私でもう少し近所を当たってみますんでプツ(通話切断)」
「大変ですよ××さん、最終号売れまくってるみたいなんですよ!」
「あ、本屋で見ないと思ったら売り切れてたんですね」
「××さんも結局買えなかったんですか? ヤフオクですごい高値ついてますよ! 許せん許せんオレが買うはずだったログインをログインをああ私は相場値を見切ってから入札するのに忙しいのでこれでプツ(通話切断)」
なんということだろう、しだいに追いつめられていくジョン氏をこれ以上見ているのはつらい。この物語は事実にもとづくものの、半分ぐらいフィクションです。
そんな私たち(主にジョン氏)の話をなにげなくしていたら、『あの頃8ビット・マシンと』も読んでおられたというエンターブレインの某社員さんが、なんとログイン最終号を送ってくださるとのこと。いやあコラムも書いてみるものですね。
しかし、ああ、しかし! 1週間がすぎ、2週間がすぎても届かない最終号。
「××さん、私結局ヤフオクの方は相場値を見誤りまして買えなかったんですよ。それで××さん、エンターブレインさんの例の件ですけど、どんな感じですかまだ届いてませんかいつ届きますかAmazonでも古書に高値がついてるんですよ買っちゃった方がいいですか届かないなら買っちゃいますがプツ(通話切断)」
ジョン氏の瞳にはまさしく狂気が宿っていた。電話だからよくわからないけど、たぶん宿っていたのだろう。
なんでもエンターブレインの方の話によれば、本当に品薄でもはや倉庫にもわずかしかないのだとか。到着が遅くなるわけだしそんな中のプレゼントに大変申し訳ない思いもあるが、ジョン氏はもう限界かもしれない。このままでは定価の数倍の値で買ってしまう!
無事に『ログイン』最終号が届いたのはそんな時のことだった。
「まさかカラーで『出して歩く』の人が見れるとは思ってませんでした。エンターブレインさんにはくれぐれもお礼ヨロシク言っておいてくださいね。じゃあ今すぐ帰ってじっくり読みますんでプツ(口で言った)」
あいかわらずどうかと思うコアな話をしていたが、とにかくこうして1人の餓狼のような男が救われたのだった。エンターブレインさんには足を向けて寝られません。