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ブリスター・ジョンの『あの頃8ビット・マシンと』

8ビット・マシンが世界のすべてだったあの時代。若者驚愕、中年感涙! 天下御免のオールドゲーマー、ブリスター・ジョン(日本人)による回想録。

(番外編)ログインの時代・後編

 前回から引き続き、Web担当Uさんと懐かしのログインをパラパラめくりながらの打ち合わせ。
「それにしてもこの時期(1988年前後)のログインは内容濃いですねえ」
 うん、特集記事以外がやたら充実してるんだよね。
「しかもスクープ記事ですらないっていう」
 ログインでは一般記事って言ってたかな? 単発の企画が凄く力入ってるね。現役の探偵さんに推理ゲームを遊んでもらったり、あと「温泉で音声入力」とか。
「今回は今回として、また別の機会に扱ってみたいですね」
 こんな面白い雑誌はほかに宮武外骨の『スコブル』ぐらいしか僕は知らないよ。
「ジョンさんこの間は『ビックリハウス』が最高に面白かったって話してたじゃないですか」
 そ、そうだっけ!? えーと、真面目な話をするとこの時期のログインといえばお笑い記事っていう印象が強いけど、こうして特集の流れを追ってみると実はすごく真剣なんだよね。人気ゲームや続編の後追いじゃなく、まだ誰も注目してない新しい潮流を模索し続けていたっていうのかな。
「新作にフォーカスしてない分、メーカーとしがらみも少なかったのかもしれませんね。あ、このソフトうちの社長が作ったやつだ」
 あははは本当だ。齢がバレるね。これ、今度「あの頃〜」のネタに使えないかなあ。
「権利関係が複雑そうですよね……あとで調べてみます。へえ、この頃に堀井雄二さんもコラム書いてるんですね」
 『虹色ディップスイッチ』ね。あのドラクエの堀井さんがエロゲーとかネットRPGにここまで深く言及してるソースって多分これぐらいしかないよなあ……。
 
 と、いつまでも話は終わらないのですがそんな打ち合わせの席をよそにログインの特集記事特集、1987年の後半からどうぞ。

7月号「きっとハヤるぜ!! ネット版多人数ゲーム」
 言葉通り本当に流行ったけど、まだこれはWebもない時代の1987年。海外の『HABITAT』の豪華さをうらやみつつもテキストオンリーでBBSを細々と運営しているような時期。それでもフットワークの軽さはさすがログイン、自前BBS『ログタット』を開設したり、チャットで楽しむ推理ゲームの提案とか(チャットRPGの変化形と言えるかも)ログイン発信の楽しみ方を追求するあたりはさすがだ。
8月号「くすぐる魅力だ!! アドベンチャー」
 とうとうAVGツクールにグラフィック機能がついて『アドベンチャーツクールmkII』にパワーアップ。海外のアドベンチャー紹介は『AMNESIA』『BUREAUCRACY』『ACCOLADE'S COMICS』『PORTAL(ハーフライフ2とは無関係)』……この時代の海外アドベンチャーゲームはどれも文章が小説レベルで翻訳が困難だったから日本に移植されること自体まれだったんだけど、ああどれも遊んでみたい!! 今見ても斬新じゃないか。何だこれは!
9月号「けっこう毛だらけシミュレーション」
 なんだかここ数ヶ月、特集タイトルの書き出しが変だと気付いたあなたは鋭い。実は1月号から頭文字が50音順に並んでいるのだ。何の意味があってこんなことをしているのか、僕にはとても想像が及ばないが、たぶん冗談以上の意味はないに違いない。
 ともかく前年12月号から続くSLG特集第3弾。『大戦略マップコレクション』のおかげでこのシリーズはまだまだ元気。新作も『M.U.L.E.』日本版や『ガイアの紋章』『プロデュース』『地球防衛軍(THEがつかない方)』『T.D.F.怪獣大戦争』とバラエティーに富んでいて、活気のあるジャンルだったことがよくわかる。
 こう充実してくると逆にログインオリジナルソフトの立場が弱くなるのも恒例で、サバゲーをゲーム化した『'SURVIVAL GAME' GAME』やダジャレだけで攻めた『ウッ! 中戦略』と、やや小粒な印象。
10月号「コケツに入らずんばプログラムオリンピック」
 4度目のプログラムオリンピックも、実質的な最終回。この後はソフトハウスが多くなりすぎて規模縮小した「番外編」になっちゃうんだよね。
 そんな今回はとうとう総勢27社。ええいもう全部書いちゃえ。アスキー、ウインキーソフト、ウルフチーム、SPS、キャリーラボ、ゲームアーツ、工画堂スタジオ、コナミ、ザイン・ソフト、システムサコム、システムソフト、スタークラフト、ソニー、ツァイト、T&Eソフト、データウエスト、デービーソフト、日本コンピューターシステム、日本テレネット、日本ファルコム、ハミングバードソフト、ビクター音楽産業、ボーステック、HOT・B、マイクロキャビン、リバーヒルソフト、ログインソフトだ! んまあ豪華。1987年の時点でパソコン持ってた人で、このうちどのメーカーのソフトも遊んだ経験がない人っているんだろうか。
11月号「最新RPG満載で興味津々さあ読めすぐ読め」
 RPG特集ももう何度目か分からないけど、常に新しい潮流に焦点を合わせるのがログイン流。『ULTIMA V』にAMIGA版『BIRD'S TALE』『DUNGEON MASTER』とリアルを追求し始めた海外の潮流をまず大特集。そして「ツクールシリーズ第2弾」と題して『RPGツクール まみりん』登場! 間宮林蔵 略してまみりん(本当だってば)。3DRPGツクールが「ダンジョン万次郎」だった流れで、フィールドRPGにも同時代の偉人を持ってきたのかしらん。
12月号「宿題のネット版多人数ゲームで酒池肉林だぞ」
 例のチャットで遊ぶ推理ゲームを本格運用してみたり、日本はおろか世界初の本格的MMORPG『電脳空間RPG』の開発に着手したりと、もう雑誌編集部の仕事の域を完全に越えていて空恐ろしくすらある。ネットRPGの方はさすがに完成には至らずα版レベルで止まっちゃったけど、これ完成してたらネットゲームの歴史も今とは違ってたかもね。
 そんな凄いことをやるかたわら、いわゆる「海戦ゲーム」を生まれたてのテレビ電話や携帯電話でやってみたりして、いやそりゃ確かにネットでマルチプレーでハイテクだけどさあ。そういうことを本気でやっちゃうあたりもログインらしさだ。携帯電話のページには「30万円もかけてやる奴ぁいねーか」とか書いてあるあたり時代を感じるね。



■ 1988年

1月号「ずうずうしくも謹賀新年おめでた3大特集!!」
 新年恒例3大特集が復活。おなじみ「お年玉ソフトウエアプレゼント」に続いて特集2は「ツールコンテスト発表」。今までいろいろツールソフトを発表していたログインだけど、読者が作ったオリジナルゲームのコンテストもやっていた。ちなみに、この横スクアクションエディタ『The Sword of Legend』部門で最優秀賞を受賞した18歳の原正憲さんは、なんと『フロントミッション・オルタナティヴ』のクリエイターとして有名なあの原正憲氏。
 特集3は「国際科学技術娯楽年間」。何しろログイン一誌だけで言い張ってたことなので検索してもほとんど情報が出てこないくらいだけど、つまりは「これから12年(〜1999年)はハイテク・アミューズメントの強化年間とする!」という宣言。この宣言のもとにゲームクリエイターはおろかゲームと関係ない各界の権威にゲームの可能性について取材したりする、当時のログインの器のデカさと無駄な本気度の頂点ともいえる特集シリーズ。残念ながら編集方針の転換か1999年(それすらもう9年前かあ)にならないうちにいつの間にか終わっちゃったけど、いつかこのコーナーでもっと本格的に取り上げてみたい話題だね。
2月号「絶妙なタイミングのシミュレーション特集だ」
 この頃のSLG特集には必ず『大戦略』シリーズと光栄(現コーエー)の歴史SLGが登場するんだけど、つくづく席巻してたよなー。ログイン的にはこの面白さを本物と認めているんだけど、でもこれだけでジャンルが閉塞してほしくはないという矛盾した感覚が誌面の構成から感じられて面白い。それにしてもログインオリジナルの『パソコン雑誌創刊シミュレーション』を3作もリメイクする必要はあったのかなあ。担当編集者のお気に入りだったんだろうか。
3月号「ぞっコン!! マルチプレイヤーゲームなのだ!!」
 ハード性能的にもネットワーク環境的にもマルチプレイが難しかった時代(アーケードの『ファイナルラップ』が最先端)に、ここまで真剣にマルチプレイを考えた雑誌が他にあったろうか。MMORPG『電脳空間RPG』の中間報告(本当に編集部で1千万円クラスのサーバを用意していた)もあれば、「モニターをテーブル状に置いて、みんなで囲んですごろくゲーム遊んだらそれだけでかなり熱かったよ!」というわりとどうでもいい発見まで、どれも彼らは本気だ。
4月号「ためになる国際科学技術娯楽年間の大特集だ」
 特集巻頭にCD-iはなあ……。実機が登場したのが1991年だということを考えれば当時は夢の新規格だったのかもしれないけど、ログインが珍しく大ハズシしちゃった例のひとつではある。
5月号「知恵と力と勇気のRPG大特集である」
 いつものログインには珍しく新作RPGの紹介に終始する、意外と普通な特集。『イースII』と『ソーサリアン』の日本ファルコムARPGが目立ってるね。
6月号「津波のごとくアクションゲームがやってくる」
 この特集のナビゲーターは「アクション大魔王」。もちろんダジャレだ。今回のテーマはアクションゲームの感覚的な気持ちよさ。当時のパソコンゲームは8ドット単位でキャラが移動するなんてざらにあることで、その点ここで紹介されてる海外の『WINGS OF FURY』や『OIDS』なんかの異常なスムーズさは光っていた。その他、シューティングゲームで得る快感をハイテク装置で科学的に測定してみたり、かと思えばローテクに振動装置をパソコンから制御するシステム(今の振動コントローラだね)を自作してみたり、あいかわらずのログイン流。でも現代の感覚で見ると、これはかなり正しい指針を示した特集だよね。
 おっと、おなじみツクールシリーズ第3弾、横スクロールSTGツール『ヨコスカウォーズ』も載ってるよ。『ボコスカウォーズ』+「横スク」で横須賀……。当時のログインにはダジャレに対する奇妙なこだわりがあったんだけど、長くなるのでこの話は略。
7月号「天真爛漫の新生ログインは、こうなる特集!!」
 ついに月刊ログインは、次号から月2回刊ログインになります! というわけで全コーナーがこれからどうなっていくか編集者の生の声を伝える、いわばログイン特集。凄いなあ、雑誌の中で自分の雑誌の特集やっちゃうんだぜ。ちなみにこの特集の扉絵は月面に貝の缶詰が浮いているシュールな画。月面に貝の缶詰……月に貝缶……月2回刊……! だめだ、この人たちは最高すぎる。

 というわけで駆け足で(それでもずいぶん時間はかかったけど)見てきたログイン月刊時代。月刊誌としてボリュームが大きくなりすぎたログインは月刊から月2回刊にシフトして、総ページ数は減ったものの速報性と娯楽性の高い雑誌としてパソコン雑誌界に長く君臨する。
 ただ後付けだし単なる懐古趣味かもしれないけれど、月刊時代のアグレッシブすぎるくらいに新しいエンターテイメントを追求する姿勢が月2回刊体制以降、徐々に失われていったのは業界にとっては大きな損失だったような気がするなあ。こうして振り返ってみて、RPGやSLGをしゃにむに牽引していった姿を見るにつけ、そう思えてならない。

(おわりに)
 明日発売のログイン休刊号の後、ログインはWebマガジンに形態を移すことが決定しています。往事のファンの一読者としては真摯な意味で、今後の大発展を願ってやみません。
 月刊アスキー別冊の季刊誌が月2回刊誌になったことがあるなら、そんな大逆転劇があっても不思議じゃないよね?

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